『「感性」のマーケティング 』
小阪裕司さん著の『感性のマーケティング』という優れた書があります。
私がよく使う文言、「科学と感性」の「感性」とは「センス、勘、直感、感覚」のような意味ですが、『感性のマーケティング』の冒頭にこう書いてあります。
「感性のマーケティングとは、あなたの感性を磨いてマーケティングを行おうという提案ではない」
「お客さんの今の感性を追いかけて、それに合わせてできるだけ迅速に対応するマーケティングの方法のことでもない」
「感性のマーケティングとは、人の感性というものをビジネスとして真正面から扱って、マーケティングに活かし、ビジネスとしての現実的な成果を上げていく。そういうマーケティングの理論であり、実践手法のこと」
「人の心と行動を読み解き、顧客をつかむことを成し遂げる方法でもある」
内容の一部を紹介します。
『「感性」のマーケティング— 心と行動を読み解き、顧客をつかむ』 一部抜粋
人の行動を考える
売上という結果は、常に人の行動の結果なのだ。
人が行動しないと売上は生まれない。
だから、人の行動に着目してビジネスを見ていかないと、いろいろなことがズレてしまう。
商品や数字ではなく、人の行動からビジネスを見る。
そして、その行動を生み出す感性とはどういうもので、それをどのように扱っていけばよりビジネスがよくなるのかということ。
消費者は心理的な快で行動を起こす
人は「快」と感じることしか行動しない。
人間には「生理的な快」以上に重要な「心理的な快」というものがある。
コルセットが大流行したことがある。病気になってしまうぐらい締め付けた時代がある。
どうしてこのような圧倒的に「生理的に不快なこと」をやるのか。
理由は、生理的には不快だけれども、心理的には快だから。
その心理的な快をもたらす源泉。それが「感性」である。
感性で「コルセットを買う」という行動をする。
だからこそ、感性を上手に扱えるようにならないとビジネスはうまくいかない。
人の行動がなければ売上はない。その行動を生む源泉は感性である。
感性のマーケティングを現場で進める
お客さんの感性に訴求する2つの方法がある。「意味訴求」と「感覚訴求」だ。
「意味訴求」は意味を伝えるのが目的なので、言葉を使うことが多い。DM、チラシ、POP、メニューやホームページに書かれていること等。
「感覚訴求」は「五感」に訴えるもの。例えば、商品のデザイン、パッケージのデザイン、店の内外装や照明の具合、BGM、香りなど人間の五感に訴えるもの。
五感とは、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五つだ。
意味訴求の威力
あるお店で売っている陶器製の猫の貯金箱のうちの一つが破損してしまった。耳が欠けてしまったのだ。
接着剤で修理したものの、明らかに破損したことがわかる状態だった。
傷モノなので、捨てるか、捨て値で処分するところだろう。
しかし、この店の店長は違った。彼はこの貯金箱を店頭に出し、こう書いたPOPを貼ったのだ。
「私はネコです。三月三日のひな祭りの日に交通事故に遭いました。
右の耳を少しケガしましたが、お陰さまで源気(げんき)になりました。
こんな私ですが可愛がってくれる飼い主さんを探しています」
すると50代のお客さんが来店し、こう言った。
「このケガしたネコの貯金箱をください」。
店長は「これは傷モノです。不良品ですがよろしいのでしょうか」と確認した。
しかしお客さんは「いいのです。この耳を破損したこの貯金箱が欲しいのです」と言って買っていった。
《「元気」は元々禅の言葉で、誰の中にもある源の気!この「気」が私たちの中にはちゃんとあります。そんな意味だと思います。》 とありました。
感覚訴求の例
照明が明るすぎるだけでお客さんは何となく落ち着かない気分になる。
裏を返せば、照明ひとつで居心地の良い空間にすることもできる。
BGMの音量が大きすぎるだけでも、人はうるさいと感じ、不快になる。
反対に音量が小さすぎると緊張してしまって、話すときも小声になったりする。これもまた不快なことだ。
近くに、とてもおいしいラーメン屋がある。ところが、いつ見てもガランとしている。
私自身その店でラーメンを食べて感じたことだが、この店、BGMがないために居心地が悪いのだ。
小規模な店構えなのに、ただでさえお客さんが少なくシーンとしている。
そのなかで静かにラーメンを食べるのは、緊張感が高く、リラックスして食事を楽しめない。
おいしいラーメンを提供すれば、自動的にお客さんが満足するわけではなく、「おいしいラーメン」を含めて店が提供しているものすべてを、お客さんは五感を通じて感性で判断しているのだ。
しかもお客さんはいちいち、「BGMが小さすぎるために店内の緊張感が高まっている」とは意識しない。
店を出たあと「なんだか落ち着かない店だね」で終わってしまうのである。
印象に残った一文
『ビジネスは人の営みであり、マーケティングとは人間の科学だ』
『感性のマーケティングとは、お金儲けの目新しいテクニックやスキルではなく、あなたが行っていることがビジネスとして社会から正当に評価され、愛されるための方法でもある』
『本人の感性を磨くことも重要だが、それ以上に大切なことは自分たちが期待する行動をお客さんにしてもらうこと』
『考えるべきは、「このお酒をどう売ろうかな」ではなく、お酒を「買う」という「行動」をお客さんにしてもらうためには、何をしなければいけないかということ』
著者紹介
小阪裕司
オラクルひと・しくみ研究所代表。九州大学客員教授・静岡大学客員教授・中部大学客員教授・日本感性工学会理事。
作家、コラムニスト、講演・セミナー講 師、企業サポートの会主宰、行政とのジョイントプログラムなどの活動を通じて、これからのビジネススタイルとその具体的な実践法を語り続ける。
山口大学卒 (美学専攻)。
大手小売業にて実務を経験後、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立、大手企業プロジェクトを手がける。
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「売れる商品がないから売れない」「値段が高いから、立地が悪いから売れない」……こうした考えはすでに前時代的なものである。
「感性」を軸にすることで、どんな商品でも、どんな立地でも、あなたの思い通りに「売上を創る」ことは可能なのだ!
本書は、1千社を超える企業の会を主宰し、独自のマーケティング論で絶大な人気を誇る著者が、今話題の「感性工学」をベースに全く新しいマーケティングを説く。
今までのビジネスが全く違って見えるようになる「感性フレーム」の説明から始まり、ビジネスを組み立てるための様々な要素、そして実際に結果を出すための方法を実践的に説明していく。
「売上が前年比30倍になったお酒」「教室数を10倍にした塾」など、具体例・実践手法も満載。
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