「感性」と「原則」に仮説を立てる
以前に代表の武永昭光が繊研新聞に執筆した『「感性」と「原則」に仮説を立てる』を紹介します。
ノウハウを得るために、「仮説を立てて検証する」はよく強調されることですが、仮説を立てるとは具体的にどうしたら良いのでしょう。
そして、仮説を立てて検証し、ノウハウを得るとはどういうことでしょうか。分かりにくいテーマです。
ノウハウ取得のために三つの方法があります。つまり、「感性の一部を仮説にする」「原則を細分化して仮説にする」「原則に優先順位をつける」ことです。
その原則には品揃えの原則や売り場づくりの原則など様々あります。
原則を細分化したり、優先順位をつけることがノウハウの取得につながるのですが、今回はそれら仮説の立て方を解説してみます。
感性を科学に変える
「小売を科学する」ためには「基本原則」と「会社が定めたルール」、そして「仮説と検証で得たノウハウ」を確立することが必要です。
基本原則を習得して、必要なルールを決めることが先決です。
次にノウハウの蓄積は仮説と検証を繰り返すことによって得られるのですが、ノウハウを蓄積する一つの方法に感性の一部を仮説として立てることがあります。
具体的には、ディスプレーでもIP(アイテム・プレゼンテーション)でもいいのですが、売り場のどこかをとらえて、「科学と感性」に分けて整理してみましょう。
つまり、「基本原則」「ルール」「ノウハウ」に該当するところが科学です。
それに該当しない部分がつくった人の感性といえるものです。
個人任せとなる感性部分は人によりまちまちで、同じ人でもその都度異なるかも知れません。
しかし、それでは安定した売り上げは見込めません。そ
こで、一つでも多くのノウハウを得るためには感性の一部を仮説ととらえてトライしてみることです。
たとえば、A,B,Cの三つの場合が考えられるとき、どれがベストなのか判断できません。
ならば、個人の感性に任せてA,B,Cを仮説として実践し、売り上げ結果を比較してみればいいのです。
仮に売り上げ結果が異なれば、一番売れたケースがベストとなり、それが一つのノウハウになります。
売り上げが同じであれば、その都度個人の感性に任せて良いことになり、それも一つのノウハウになります。
どちらが良いのかよく分からない、あるいは人により意見に相違がある、やってみなければ分からないときはまずやってみることです。
ただし闇雲にやるのではなく、明確に”仮説として認識”して実行することがポイントです。
原則を細分化する
原則も色々あります。たとえば、VP(ヴィジュアル・プレゼンテーション)の原則には「統一性」があります。
しかし、その統一にも様々な仕方があります。「どこまで統一するのがベストか」もありますし、店によって「ベストの統一性が異なる」かも知れません。
ネガティブスペースの取り方も店によって様々で、その店としてのベストがあるはずです。
そのベストを導き出すには仮説と検証しかありません。
このように原則を細分化することでノウハウを得ることができるわけです。
原則に優先順位をつける
原則に優先順位をつけることもノウハウを取得する上で不可欠です。
例えば、展開分類を決めた後に考える「商品配置」にも「売り場の前面には低価格」とか、「前面にはメーン商品」「奥にメーン商品」などの原則がありますが、前面の配置でも「低価格商品」か、「メーン商品」かでは、顧客の立ち止まる確率や売り上げ結果がろうかを比較検証する必要があります。
それによって前面は「低価格商品よりメーン商品を配置すべき」などのノウハウを取ることができるのです。
ノウハウを蓄積して競合店と差別化を図る
原則をマスターすると、きれいで魅力的なお店ができます。
そこまで達していない店は、まずそのレベルを目指すことが必要ですが、「きれいになった」との満足にととまっていては、他店に差をつけられます。
次の段階は仮説を立ててノウハウを蓄積することです。
売り場はノウハウの宝庫。仮説の立て方を習得すれば、ノウハウをどんどん蓄積できるはずです。
ノウハウの蓄積が他店との差別化につながっていくのです。
さらに、そのノウハウを標準化できれば、会社としてのルールになっていきます。
また、販売員が売り場づくりの基本を習得したら、次は仮説の立て方を教えるべきです。
そうすると、客を待っている状態のときにやることがたくさんでき、暇そうに黙って立っていることはなくなります。
なぜなら、仮説の立て方を習得すると、考える販売員が育ち、ノウハウがどんどん蓄積でき、やるべきことが多くなって多忙になるからです。
科学を広く確立できれば、個人の感性頼みの、リスクの多い体質から脱却できます。
仮説の立て方を販売員にまで広く浸透させることが重要です。
それができれば、「科学的な運営」への転換が果たせるだけでなく、仕事の効率も大いに上がります。
まとめ
仮説の立て方には三つあり、「感性の一部を仮説にする」「原則を細分化して仮説にする」「原則に優先順位をつける」です。
その原則には品揃えの原則や売り場づくりの原則など様々あります。